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「さてと、そろそろ行きますか」 と僕は切り出した。
「もう行くのかよ?」 「うん」 「もうちょっとこの景色みたいってゆう気持ちがなんでお前にはわいてこないかなー?」 「まるで敬祐がこの場所見つけたみたいだな。もちろん俺だってもうちょっと見てたいけ ど、もうそろそろ山の向こうに沈んじゃうだろ、それに...」 といってから僕はわざと少し間を空けた。 「なんだよ?」敬祐が気になったように聞いてくる。 僕は少し自慢げに 「これからが最高なんだよ」 と思わせぶりに言い、右手で支えていた自転車にまたがっ た。 「おい、どこに行く気だよ」敬祐が少し慌てながら自分も自転車にまたがった。 「帰るんだよ!」ぐいっとペダルを力強く漕ぎ出しながら坂のほうに向かった。下り坂に 入ると一気に僕らの町が視界に入ってくる。左に海、右手に背後からの夕日に染められてオレ ンジ色に見える、町や港をはるか下に見ながら、僕らはぐんぐん加速していった。気持ちのい い、かすかに潮の香りのする風を顔と体全体に受けながらみるこの景色は最高だ。 「うおー!!」敬祐が驚いたらしく後ろで叫んでいる。 思ったとおりに敬祐を驚かせられたので、僕はうれしかった。 この景色と風がすべてを流し去ってくれる、そう思えた。 # by tooitooimitinoue | 2005-10-29 08:13
それにしても本当に、良くこんなに正反対の僕らが(いや、僕が)こんなに仲良くなれたも
のだ。 そんなことを思いながら夕焼けの景色に驚いて目を丸くしている敬祐の横顔を見ていると、敬祐 が 「そういえばそろそろか、”深山(みやま)登り”」 とつぶやいた。 「ああ、そういえばもうそんな時期か」 ”深山登り”とは、いわゆるうちの高校の「修学旅行」というやつだ。学校から徒歩で15分ほどで ついいてしまう町外れの山に、それぞれ個人で、またはグループで登山するという毎年の恒例 行事だが、いったいなんでうちの学校の「修学旅行」はそんなにケチなのかよくわからない。普 通、修学旅行といえばもっとどこかに遠出する泊りがけの、年間行事の中でも一大イベントの はずだ。けれどうちの学校では、「身近の自然と郷土に親しむ」とかなんとかうそ臭い目的つき の「遠足」みたいなものだった。 まだ学校に入学して少し落ち着いてきた頃、修学旅行が修学旅行と呼んでいいのかためらわ れる程のものとは、引越しで慌てて高校を決めた僕にはもちろん未知の事実だった。当時は聞 いたときは驚きと落胆を隠せない僕だったが、なぜかすでに経験した上級生や、話から聞いて いる地元の同級生はかなりこの「修学旅行」を楽しみにしている様子だった。 その理由のひとつはなんでも頂上から眺める景色が信じられないくらい絶景らしい。たしかに 今僕らが立っているこの丘からでもこんな景色が見れるのだから、丘よりもはるかに標高の高 い深山の頂上からだったらみんなが楽しみにするほどの景色がみれることは想像に難くない。 そしてもうひとつの最大の理由がなんでも一番に頂上に着いた生徒は願い事が叶うというな んとも迷信くさいはなしだった。僕はいたってこういう話は昔から信じないたちなので最初から迷 信ときめこんでいた。 「深山登りが人気な理由知ってるか?」 「もちろん」 僕はすぐに答えた。 「景色と例の迷信だろ?」 「ここの景色見てたら、なんか頭に深山登りがうかんできたよ」 「きっともっときれいなんだろうな」 「ああ、きっとな」 # by tooitooimitinoue | 2005-10-20 06:08
敬祐と僕はすぐに仲良くなった。敬祐はしゃべり好き、そして自分で言うのもなんだが僕が
「聞き上手」というやつだったからかもしれない。僕は元来「話す」というよりも聞いているほうが すきだ、いや、聞いているほうが「楽だから」といってもいいかもしれない。 ところで、僕の名前は深沢 流時、流れるに時と書いて「りゅうじ」と読ませる。初めて聞く人 はたいてい珍しい名前という印象を持つだろう。なんでも両親は、時、つまり時代に流されない で自分の道を歩んでほしい、そう願って名づけたらしい。一見すると、時代に流されそうな、とい う逆の意味にとられてしまいそうな名前だ。僕は高校入学と父親の転勤のために、この町、琴 浦町に引っ越してきたばかりで、当然友達もいなかった。つまり敬祐がこの町での初めての友 達ということになる。 スポーツがもとから得意でなかった僕は、趣味が読書、夢が作家という活発というには程遠い 少年だったが、目は昔から良かったのでメガネはしていなかった。 # by tooitooimitinoue | 2005-10-13 13:42
おそらくその理由の1つはクラスが同じ、しかも席が前後だったことにあるだろう。学校ってとこ
はどこでもそうだけど、クラスと部活がメインだ。中でも時間を共に過ごすことの多いクラスとい う場所で、席というのはかなり重要なものになってくる(だから席替えはいつでも学校のメインイ ベントだ)。しかも付近で唯一の進学校だったうちの高校には、この町だけでなくいろいろなとこ ろから生徒が入学してくる。だから尚更、クラス、ましてや席順は大事だった。 敬祐の本名は平田 敬祐、そして僕の名前は深沢 流時。「ひ」と「ふ」、この二つのひらがな のおかげで僕らは「親友」になれたといっても言い過ぎではないだろう。 僕らが初めて会話(といっても一方的に敬祐がしゃべっていただけだが)したのは,入学式の 日だった。全校生徒が集まり体育館でお決まりの入学式を済ませると、クラスに移動して担任 の自己紹介が始まる。そのとき僕は前の席に誰もいないので不思議に思ったが、すぐにその疑 問は解けた。担任の自己紹介が終わりに近づいた頃、後ろの扉が小さな音をたてて開き、小さ く体を丸めて忍び歩きで男子生徒が一人入ってきたのだ。僕の前の席にその生徒が着くなり、 先生が「平田か?」と聞くと、「はい」と答えた。担任が「入学早々から遅刻とはたいした生徒だ な」と文句を言う出すと、急に椅子を僕のほうに傾け「いやみな担任だよな」と苦笑いしながら話 しかけてきた。その生徒が敬祐だった。 # by tooitooimitinoue | 2005-10-11 12:15
「 ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」
苦しい、心臓が今にも飛び出しそうだ。ペダルをこぐ足は限界に近い。 「あと...少し!...、ふぅー!」 自転車をこぎ始めてからかれこれ15分ほどになるか、やっとこの小高い丘の頂上につくことが できた。もうすでにあたりは暗くなり始めている。普段そんなに働かされない僕の足は、悲鳴を 上げている、ふくらはぎもパンパンだ。 目の前には沈み行く夕日の下にオレンジ色に染まった日本海と地平線がどこまでも続いてい る。まさに”絶景”だ。 「ひゅー、お前の言ったとおりだな」 「だろ」僕はすこし得意げに返事した。おそらくこの時間にここから見られる夕日のすばらしさを 知っているのは僕と、今隣でそのすばらしさを知ったばかりの敬祐くらいだろう。 「この景色見れただけで疲れも吹っ飛ぶな」 「ウソつけ、ちっとも疲れてなんていないくせに」 「いやいや、誰でもこんなに自転車で坂上れば疲れるっつーの」敬祐が笑いながら首を振った。 敬祐はサッカー部に所属するうちの高校でも指折りのスポーツマンだ、運動神経は抜群で 背も高く、顔もいいときている。しかもユーモアもあっておもしろいので人気者、つまり完璧人間 だ(どこの学校にも1人くらいいるでしょ?)。運動が苦手な僕とは正反対な生徒だ。なんで僕が こんなやつと「親友」になれたのかは僕にもよくわからないけれど。 # by tooitooimitinoue | 2005-10-10 03:47
僕らはあの頃何をし、何を感じ、何を思ったんだろうか。
あの海辺の、あの頃の僕らにとっての世界のすべてだった小さな町で、笑い、怒り、喜び、そし て時に泣いた、僕らがまだ「少年」だった頃。 これから僕が話すのは、些細な事に一喜一憂していたそんな頃のお話。 # by tooitooimitinoue | 2005-10-10 02:56
始まりはいつも言葉
今じゃないとき ここじゃない場所 美しいと感じられることが 今の歩みの わずかな支え コトバはチカラに変わり チカラはカタチに変わる # by tooitooimitinoue | 2005-10-10 02:40
こんにちわ、はじめまして、りおといいます。
このブログを見に来て頂いている方がもしいるのならば心から感謝したいと思います。 はっきり言って僕はパソコンに詳しかったり、普段からパソコンに触れる機会が多かったりなんてことは全くない人間です。現にこのブログも僕の初めてのサイトです。 ところで僕はブログはいわば「日記」のようなものだと思っています(もし間違っていたらすみません!)。けれどこの僕の「始まりはいつもコトバ」にはぼくは小説を書いていきたいと思っています。 小説などと呼べる代物なのかはわかりませんが、日々の中で僕自身が体験したこと、文章にしたいと思ったことを書くつもりです、なのでもしかしたら僕自身の体験記?に近くなるかもしれません。 もし少しでも興味をもって、そして読んでいただけたら本当に光栄です。以上ブログ開設に当たっての始まりの言葉でした。 りお # by tooitooimitinoue | 2005-10-09 12:40
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